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デザイン編

【このまとめは物語のネタバレを多く含んでいます。ご一読される場合はご注意ください】

『俺の屍を越えてゆけ2』の発売から3カ月がたった2014年10月某日、キャラデザインと楽曲についてのインタビューを行った。参加していただいたのは、キャラデザインを担当した佐嶋真実さんと、楽曲を担当した樹原孝之介氏。そこにゲームデザイナーの桝田省治氏を加えて、どのようにキャラが、楽曲が誕生したのかをお話しいただいた。

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佐嶋真実さん(左)。イラストレーター。前作に引き続き、キャラデザインを手掛ける。
樹原孝之介氏(中)。作曲&編曲を担当。前作『俺屍』の音楽担当、樹原涼子さんの子息。
桝田省治氏(右)。本作のゲームデザイナー。デザインや楽曲へのオーダーについて語る。

――お2人は、いつごろ『俺屍2』の開発が始まるというお話を受けたのでしょうか?

佐嶋:PSP版を作るときには、『2』を見越してデザインしてほしいと言われたキャラクターが何人かいました。ですから制作の話を聞いたのはそのころですね。
樹原:PSP版のときは、ちらっと聞いたことがあるかないかですね。そのときは音楽を担当するのが母になるのか、僕になるのかも決まっていなかったです。『俺屍2』を実際に制作するにあたって、正式にお話がきました。
桝田:僕がオファーだしたのっていつくらいだっけ。
樹原:去年の春や初夏に1曲目を作ったので、その少し前くらいです。
桝田:そんなくらいか。佐嶋さんには、企画段階からかかわってもらっているので孝之介くんよりも前になるね。

――PSP版の段階で『2』を見据えて数人のデザインをされたということですが、そのときにデザインされたのは?

佐嶋:阿部晴明(あべのせいめい)と、黄川人(きつと)の神様姿、あとは太照天昼子(たいしょうてんひるこ)の全身です。
桝田:昼子は戦闘に関係するものなのでともかく、晴明と黄川人の神様姿は完全に『2』をイメージしていたかな。

――そういえば、PSP版の取材をしたときに、「晴明は『2』のボスだよ」と桝田さんに壮絶なネタバレをされたことを思い出しました(笑)。

桝田:そうだっけ(笑)。その頃には、おおざっぱには『2』の構想は決まっていて、PSP版で晴明のキャラ立てをしておこうと思った。黄川人は『2』で飛んでいるシーンが登場するだろうと思って、翼を生やしてもらったはず……。

――黄川人の神様姿を見たユーザーの反応は、喜びや驚きが多かったと思います。その反応は、想定の範囲内ですか?

桝田:1番人気のあるキャラクターだからね。確か、彼のデザインは2バージョンあったような気がする。脚の見え方が違うんだっけ(笑)?
佐嶋:そうですね、肌面積が違いました(笑)。最終的には、露出の多いデザインになっています。
桝田:PSP版のときは上半身しか見えないけど、そのころから細部までちゃんと作っていたよ。
樹原:桝田さんから2種類のデザインをオファーされたんですか。
桝田:いや、佐嶋さんがやってくれた。翼が生えるということは、上から降りてくることになる。そのとき服がひらっとするので、肌が見えたほうが喜ぶ人が多いと思って今のデザインに(笑)。確か『2』のオープニングシーンも、脚から入ってくるように描いていたような気がする。PSP版で黄川人や昼子のイラストを見てどうだった?
樹原:昼子の全身が見えて、すごいなと思った印象が強いですね。綺麗だけど、すごく強そうという自分のなかの昼子像と合っていました。
桝田:なるほどね。

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▲脚の肌面積の多い黄川人の全身図。

――メインキャラのデザインでは、桝田さんからどのようにオーダーしました?

桝田:割とざっくりとお願いしたと思う。年齢とか職業とか、おおざっぱな性格くらいかな。佐嶋さんはそのオーダーからどう生み出したの?
佐嶋:コーちんの場合、最初はあの子だけじゃなくて、もう1人男の子がいたので対になるデザインにしていました。男の子バージョンが短髪だったので、自然にロングヘアーになりましたね。
桝田:最初は、ユーザーに性別を選んでもらう設定だったんだよ。それで男の子を先に発注していたんだっけ?
佐嶋:そうです。
桝田:あのころは、黄川人が変身しているという設定だったかな。
佐嶋:そう言っていましたね。
樹原:それも、見てみたかったですね。
桝田:男の子バージョンが黄川人の化身で、黄川人の黄から「こうちゃん」とか「こーちん」とか呼んでいた気がする。だけどアルファ(※アルファ・システム)が男女2体作るのは、予算もスケジュールも厳しいと言うから、だったら無難に女の子かなと。もし男女だったら、今のコーちんほど動かなかっただろうね(笑)。コーちんが今あんなに動くのは、コーちん大好きなスタッフがゴールデンウィークをつぶして作った愛の結晶なんだよ。男の子だったら、あの情熱はなかったと思うね(笑)。

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▲女の子バージョンと男の子バージョンのコーちんの初期設定画。

――スタッフさんに感謝ですね! ところでコーちんたちのデザインは、何パターンか作られたのですか?

佐嶋:イタチ系とリス系2バージョン、耳が違うものをデザインしました。
桝田:神様で使っていない動物を探したね。
佐嶋:男の子バージョンでは、女装したデザインも描きました。女装してお買い物に行くっていう設定だったような(笑)。
桝田:男の子バージョンは、黄川人の服の名残があるデザインになっていたはず。
佐嶋:ちなみに、コーちんの夏毛、冬毛とあるのは、アルファさんから「毛の色を変えるのはどうですか」と言っていただいた気がします。ゲームのシステムにもかかわることなので、こちらからは言い出せなかったです。
桝田:え、佐嶋さんが言ったんじゃない? 佐嶋さんが夏毛と冬毛っていう話をして、アルファに問い合わせたら2体作るよりは楽だと言われた記憶があるよ。
佐嶋:あれ、そうでしたか(笑)。

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▲デザイン初期のリスモデルのコーちんの設定画。

――コーちんといえば、人とイタチのちょうど中間のようなデザインでゲームに出てきた記憶が。作中に1シーンだけですが、そのシーンを入れた意図とは?

桝田:彼女が人じゃないということを、改めて言いたかった。コーちんが話す内容も 、普通の人とは微妙にずれているじゃない。
樹原:確かにケモノならではの部分を感じるかも。
桝田:本作ではコーちんも含めて、一族の思惑から近いところにいるけど微妙にずれている人たちをたくさん出したかった。夜鳥子(ぬえこ)や神様もそう。みんな都合があって、妥協点や接点、対立などをする関係だね。周りにままならない者がたくさんいたほうが、一族が際立つかなと思ったんだよ。

――ままならない部分が多いぶん、身近な一族を大切にしたいという想いは強くなった気がします。

桝田:もう1つのままならない存在が、ほかのプレイヤーの一族だね。ほかのユーザーを一族として認めるか、認めないかというのが大きいんじゃないかな。神様まで家族として扱っている人もいれば、ほかのプレイヤーの一族も親戚縁者として扱う人もいる。一番顕著なのが、夜鳥子とコーちんだよね。彼女たちを一族として扱うか、そうじゃないかは人によって大きく分かれる。そのへんの解釈によって、距離感が変わってくるよね。

――さて、夜鳥子についてですが、1度小説でデザインを描かれていると思います。本作のデザインは、小説版を踏まえてになるのでしょうか?

佐嶋:顔と体型については、小説版を踏まえています。衣装については、アルファさんにデザインをしてもらいました。
桝田:佐嶋さんの夜鳥子はすぐに脱いじゃうからね(笑)。そのまんまじゃ出せない。そうそう、ほっとくとアルファやアニメ制作会社が夜鳥子の胸を大きくしようとするから、そのたびに佐嶋さんが注意していたね(笑)。
佐嶋:アニメシーンでも胸が大きくなるので、「その子に谷間はできないです」と(笑)。
桝田:夜鳥子はどんな手順でデザインしたの?
佐嶋:最初は、小説(注:桝田省治の小説『鬼切り夜鳥子~百鬼夜行学園~』エンターブレイン刊)の主人公である駒子のデザインから始まりました。駒子は元気のよさそうなポニーテールの子で、陸上部に入っているので脚がムチムチ。あとは、年齢のわりに幼くみえるという設定でデザインしています。丸い顔と目なので、夜鳥子が彼女に乗り移ったときのギャップを意識して、目が半開きというのを考えました。それを幹として、夜鳥子の本当の顔を作っていきましたね。

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▲夜鳥子の顔パターン。

――では、阿部晴明のデザインは、どのように決めていったのでしょうか?

桝田:中性的な感じにしてほしいとお願いしたくらい?
佐嶋:中性的、両性具有、優美な感じというオーダーでしたね。最初は歴史上の阿部晴明と同じように狐の子という設定だったのですが、それが転がって両親が龍神ということになったんですよね。
桝田:それは1つ前のシナリオだね。5、6年前かな。
桝田:開発当初、『2』は東北が舞台だったけど、東日本大震災が来た。東北地方が舞台なのに、天災がたくさん起こるのは心苦しいという話になったのを覚えている。東北にある龍神伝説の八郎と辰子の恋物語を描こうとしていたんですが、プロットの途中で地震が起こって内容を変えたんだよね。
佐嶋:そうですね。最初の狐という話のときに耳がとがって、着物が黄色になりました。その後、龍神の子って設定が突然出てきて、聞いてないってなりましたね(笑)。その龍神の子という話が出たときに、両性具有というか中性的な雰囲気にしようということになりました。

――では今の晴明は、両性具有なんですか?

桝田:いや、今はふつうの美男子だよ(笑)。ちなみに、最初晴明の声(CV:平川大輔)は、ほかの人を考えていたはず。でも別の仕事で平川くんの泣き叫んでいる声を聴いて、この堪んない色気があるなと思ってお願いした。

――ハマり役ですよね。

佐嶋:あと、晴明はよく見ると夜鳥子と同じ勾玉をつけているんですが、夜鳥子の耳にある勾玉はアルファさんが付けてくれたんです。
桝田:晴明と夜鳥子はお互いに転生してしまうので、きっと生まれ変わって出会っても相手がわからなくなってしまう。もしも何百年後かにばったり会ったときに、お互いがわかるようにとこの勾玉を夜鳥子が付けたという感じかな。

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▲阿部晴明の正面と背面の設定画。

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▲阿部晴明の持つ、勾玉の首飾りの設定。

――そんなロマンチックな設定があるんですね。本作にはあと2人、田鶴姫(たづひめ)と力丸(りきまる)というサブキャラクターがいますが、彼らはどのようにデザインさえていったのでしょうか?

佐嶋:力丸は性格的に、角ばったデザインにしました。姫は歳よりも幼く見え、気の強さがわかるようにしています。
桝田:田鶴姫もいくつかデザインがあったよね?
佐嶋:髪型や服装など、4パターンくらい描きましたね。いろいろなデザインを見て、アルファさんのスタッフがここをこうしたらどうですかというアイデアを出してくださいました。
桝田:ほかのキャラとの兼ね合いで、1番お姫様らしいデザインを残した気がする。よく見たら、着物に鶴の模様が描かれてるね。あれも、自分で描いたの?
佐嶋:描きましたね。
桝田:デザインするときは、歴史ものらしさを意識してる? それとも、現代風のかわいらしさを意識してる?
佐嶋:かわいらしさは、意識していますね。時代考証は、最初から無茶苦茶なので(笑)。意識していないわけではないんですが、神様にしてもどう見ても平安時代じゃない方がいますからね。
桝田:平安時代に絞ってしまうと、(その時代にあった)デザインそのものがそんなにないからね。
佐嶋:色と模様でどうにかするしかないですね。家格によって色も決まっているので、外れたことをする人はいませんから。
桝田:人物、神様と登場人物が多いので、デザインが被らないようにするのは、たいへんだったんじゃない?
佐嶋:髪型や目を一覧表にして、同じにならないように管理していました。キャラクターの印象が似てしまった場合は、ボツにしています。
桝田:神様のデザインはどうしてるの?
佐嶋:属性がよくわかるようにデザインしています。前作がバストアップしか見えなかったので、それだけでどんな人物か分かってもらう必要がありましたから。色は人間とは違う感じが表現できるようにしています。

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▲力丸の三面図。

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▲田鶴姫の三面図。

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▲田鶴姫の着物に描かれた模様の詳細。

――『2』では神様の全身以外に三面図も用意されていますが、これはどのようにアイデアを膨らませていったのですか?

佐嶋:バストアップをデザインしたときに、ぼんやりとデザインを考えていたものもあれば、まったく考えていなかったものもあります。なんとかつながるようにしました。
桝田:神様のデザインでは、僕はほとんどオーダーしなかったかな。もともとのPS版では上半身しかないデザインなので、胸より上に個性を持たせる必要がある。そうしたときに全身や後姿をプラスするとなると、後付でいろいろ考えなきゃいけないのでたいへんだろうなと思っていたけど。
佐嶋:今回は情報を全身に分散させられるので、髪の毛などを凝った人などがいます。

――デザインするうえに苦労したことはありますか?

佐嶋:資料集めがたいへんでしたね。デザインそのものは、あまり元のキャラクターから変えないように気をつけています。自分では手直ししたいキャラクターでも、ユーザーさんが気に入っている場合もありますから。発売後「変えないほうがよかったのに」と言われないようにしました(笑)。
桝田:手直ししたかった神様は誰?
佐嶋:けっこういますね(笑)。黄黒天吠丸(こうこくてんほえまる)は、本当に顔が残念だったなと思っています。

――三面図を描かれるうえで、着物やアクセサリーなどもかなり細かい部分まで描きこまれていますよね。

桝田:今回は、着物の柄まで佐嶋さんの指定。これ、見えない部分じゃんと思うパーツもあった(笑)。
樹原:交神の間で、神様のモデルを回転できるじゃないですか。いろいろ回転させましたね。華厳大仙(けごんたいせん)とかすごかった です。
桝田:物理的にどうなってるのか、気になる人もいるよね(笑)。細かい着物の模様を表現できるようになったのも、3Dになったからこそできること。昔なら、1つ1つ描く必要があったから。

――佐嶋さんは、3Dモデルをご覧になった感想はいかがでしたか?

佐嶋:平面の嘘が、ちゃんと本物になっているなと思いました(笑)。
桝田:最初にあがってきたモデルは、全然似てなかったんだよ。半年くらい試行錯誤している間に、ペースも上がってきて失敗も少なくなった。
佐嶋:3Dモデルを作っている会社に出向いて、伝わりづらい部分を練り消しゴムで作ったりしましたよ(笑)。
桝田:すごい! 器用なことをするよね。
佐嶋:ちなみに練り消しゴムをこねて説明をしたのは、若草山萌子(わかくさやまもえこ)さんです。髪飾りのあたりを作りました。

――三面図を起こしたときに、苦戦した、楽しかった神様はいますか?

佐嶋:松葉ノお甲(まつばのおこう)は、カニが難しかったですね。
樹原:カニはたいへんそう。
佐嶋:逆に赤羽根天神(あかばねてんじん)は楽しかったですね。袖口を派手にしてあげられました。
桝田:模様はやっぱり苦労する?
佐嶋:そうですね。神様の特徴に合わせる必要があるので、苦労しました。
桝田:そういう模様とかってPS Vitaになったからの部分もあるんだよね。
佐嶋:グラデーションがキレイにでるので、数を増やしました。模様も入れられるので、制限などは特に考えずに描いています。
桝田:最初のPS版のときは、何のツールで描いていたの?
佐嶋:紙と鉛筆ですね。
桝田:今はデジタルだから、グラデーションを作るのも楽になってるし取り入れやすいよね。PS版の開発当時は、完成したイラストをコピーしてそれに色を塗っていたのを思い出した。

――そういう部分にも、15年という年月を感じますね。

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▲若草山萌子のイメージ画。

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▲松葉ノお甲の頭部設定。

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▲赤羽根天神の衣装設定。

後半の音楽編へ続く